-
ホーム
-
萱島珈琲焙煎所として取り扱うコーヒー豆について
2022年の後半頃から、実はある悩みを抱いていました。
取り扱う生豆についてです。
話は僕がまだコーヒーの販売を始める前に遡ります。
焙煎機がなくても、片手鍋でコーヒーの焙煎ができることを知り、生豆を購入できるお店を探しました。
意外かもしれませんが、生豆を買うこと自体はそれほど難しくありませんでした。
自家焙煎をしているお店に行けば、もちろん生豆を置いているので販売してくれるお店もありますし、ネットで検索すれば生豆をメインに販売しているショップもたくさんありました。
amazonや楽天市場でも購入できます。
そのおかげで、僕はすぐにいくつかのオンラインショップで生豆を購入し、焙煎を始めることができました。
その時に気に入った銘柄を厳選して繰り返し扱うようにして、焙煎のクオリティーを高めるように精進しながら、販売をしてきた。というのが、現在までの経緯です。
それからしばらくの時を経て、とある自家焙煎の珈琲屋さんに出向いた時のことです。
いくつかの銘柄が並ぶのを眺めていると、その中に見覚えのある銘柄があることに気がつきました。
ケニア レッドマウンテン
タンザニア ンゴロンゴロ
コロンビア ナリーニョコンサカ
自分が販売している銘柄と同じなのです。
ということは、仕入れているところも同じなのではと思い、その時は親近感が湧き嬉しく思いました。
ですが、もうひとつの事例で考えに少し変化がありました。
YouTubeで、コーヒー屋さんの紹介動画を見ていると、そのお店の棚に見覚えのある紙袋が…
僕が買っている豆屋さんの紙袋です。
この二つの状況からよく考えてみると、逆に僕のオンラインショップを見て同じように思っている人が存在するということです。
さらに深掘りすると、今僕が扱っている生豆は、そのお店を知っている人なら誰でも買うことができる物であり、それは「仕入れ」ではなく、1消費者として「購入」しているに過ぎないということです。
販売目的ではなく、個人的に趣味として同じ豆を買って、自分で焙煎している人もいるでしょう。(最近は、コロナ禍以降おうちカフェ需要が伸びている傾向にあるので、自分で焙煎している人は増えていると思われます。)
であるならば、その誰でも手に入れることができ、誰でも焙煎できる豆を、「僕が焙煎したコーヒーです!」と満足気に売っているのがなんとも滑稽に思えてしまい、自分の商品に面白さを感じなくなってしまっていました。
この状況に何か変化をつけたいと2022年の後半はずっと考えていました。
そんな時、偶然見つけたのがインドネシアのレディ・プルナワンさんのInstagramアカウントです。
年が明けるまでに、1ヶ月も残っていない時期でした。
「KOPI TANI PANGANDARAN」という会社名でコーヒー生産をしている彼は、農家に生まれ、大学で農学を学び、インターンシップで来日して山梨県で日本の農業を体験したそうです。
そしてインドネシアに帰国して、日本で得た自然農法の知識を使って、有機肥料を使った自然環境にもやさしく、より高品質なコーヒー豆の生産を実現しています。
生産数はごく小規模で、現状は大手コーヒー企業からの発注は受けられないようです。
僕はまずは味を確かめるために少量を発注し、サンプル焙煎をしました。
銘柄は2種類。
ロブスタ パンガンダラン
アラビカ アロマニス
アロマニスは、まるでエチオピアのような華やかな果実味が素晴らしく、間違いなく美味しいコーヒーです。
しかし、特筆すべきはロブスタの方。
ロブスタという品種は、病気に強く育ちやすい代わりに味が悪く、通常はインスタントコーヒーや缶コーヒーの材料になることが多いとされており、あまりストレートで楽しむことはないというのが定石であり、実際に僕も以前に試して苦い思いをしています。
とはいえ、ブレンドレシピを作る時に、もう少しパンチが欲しい時にロブスタを10%ほど隠し味として使うと良いアクセントになることが多いので、決して不必要な品種ではないのですが、それでも商品価値としては難しいと言わざるを得ません。
料理で言うところの、スパイスや調味料のような扱い方のイメージです。
そうとわかっていても、僕はストレートで試飲してみることにしました。
期待はしていません。本当に念の為のつもりでした。
しかし、しかしですよ、美味しいと感じている自分がいて驚愕してしまいました!
インドネシアのロブスタらしい、独特な風味があるもののいやらしさがなく、苦味の中に甘味を感じ、艶やかな質感のある後味が心地よい一杯になりました。
幸いなことに、レディさんの生豆は、彼が日本にいたときにサポートしていた、日本語学校を運営しているふじやま株式会社さんが日本での販売を担っておられるので、快く卸して頂けました。
斯くして、僕の悩みは晴れ、新たなラインナップで2023年に臨むことができます。
今後は、ここでしか買えないオリジナリティーを追求して商品を増やしていきますので、楽しみにして頂ければ幸いです!